<民事訴訟>裁判所から訴状がきた!どうしよう。

Case:

Aさんのもとに、裁判所からAさんを被告とする「訴状」などの書類が郵便で送られてきました。どうしましょう?

Question:

大体、この「訴状」って何?

Answer:

「訴状」とあるからには民事裁判です(民事訴訟法133条1項)。刑事裁判では「起訴状」となります(刑事訴訟法256条1項)。

訴状が送られてきたということは、Aさんが被告として訴えを提起されたということです。訴えの提起は、訴状を裁判所に提出することになっており、裁判所は、この訴状の副本を被告に送達しなければならないことになっています(民事訴訟法138条1項)。

Question:

じゃあ、「訴え」って何?

Answer:

訴えには、給付の訴え、形成の訴え、確認の訴えなどがありますが、民事裁判において、基本的に、訴えは「被告は、原告に対し、いくら払え」という金銭請求の訴えです。
日本では、相手にお金を払えと請求したけども、相手がお金を払おうとしない時、相手のポケットに入っている財布を無理やり取り上げて、そこからお金を取るとか、相手の家に勝手に押し入って、タンスの中に入っているお金を持ち出してくる、ということは禁止されています。これを自力救済の禁止といいます。

相手の「払わない」という意思に反して、無理やりお金を取り上げるのは許されないのです。仮に相手が「払わなければならない」立場にあったとしても、無理やり相手のポケットに手を突っ込んで財布を取り上げたりしたなら、逆に窃盗罪や強盗罪という犯罪になってしまいます。我が国ではこのようなことは許されないのです。

そこで、相手が払おうとしない時に、相手に払わせるためには、裁判所に訴えを提起して、自分の権利を認めてもらい、この認めてもらった権利を根拠に、国の力を借りて、相手から取り立てなければならないことになっています。

国の力を借りて、いやがる相手からお金を無理やり取り立てることを強制執行といいますが、訴えは、この強制執行をすることができる地位を獲得するためにするものだと言っていいでしょう。

Question:

訴状と一緒に「第1回口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」っていうのが同封されてたけど、これは何?

Answer:

訴状と一緒に必ず「第1回口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」が同封されています。これには、裁判について、大切なことが網羅されて書かれています。

・事件番号
・事件名
・原告、被告などの当事者の名前
・裁判所の所在地や連絡先
・裁判所の担当部や担当の書記官
・第1回期日の日時と手続の種類
・第1回期日が行われる場所
・答弁書を出しなさいということ
・答弁書をいつまでに出さないといけないかということ
・第1回期日に出頭した時に、この書面を法廷で示すようにということ

などが書かれています。

裁判所に訴えられた事件について電話で問い合わせるときは、担当部の担当書記官が窓口になります。
担当部に直通の電話番号が記載されているときは、そこに電話をかけて、担当書記官に代わってもらい、事件番号、事件名、当事者名を話して、それから事件のことについて、話すことになります。裁判所の代表番号が書かれているときは、そこに電話をかけて、「民事○部をお願いします。」などと言って、担当部につないでもらいます。
ただし、原告の訴えの中身について書記官が答えることはありません。
あくまでも、何を準備したらいいかとか、どうやって裁判所まで行ったらいいかとか、手続的なことに限ります。訴えの中身については、裁判所の法廷ででやり合うことになるのです。

Question:

呼出状に書かれている第1回期日は都合が悪くて行けないよ。どうすればいい?

Answer:

まず、第1回期日を変更してもらえばいいと思ってしまいますが、裁判所は、絶対に第1回期日を変更しません。

絶対に、と言ってしまうと言い過ぎですが、法律(民事訴訟法)では、「訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼びださなければならない。」(139条)、「口頭弁論…の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り許す。」(93条3項)、となっていて、「顕著な事由」(「やむを得ない事由」よりは広い意味)がなければ許されません。ただ、「最初の期日の変更は、当事者の合意がある場合にも許す」(93条3項ただし書)となっているので、当事者つまり被告であるAさんと訴えた原告の合意があれば変更できることにはなっています。
この第1回期日は、実は、原告が訴えを提起して、つまり訴状を裁判所に提出して、それから原告と裁判所書記官が打ち合わせて決めるものなのです。被告であるAさんの都合は聞きません。ですから、原告と裁判所の都合で決められます。なので、いくら原告と被告が合意するといっても、もともと原告の都合で決められた日時なので、しかも、原告は裁判の相手、つまり、けんかの相手ですから、簡単にこちらの希望通りに期日の変更に応じてくれることはないと思って正解です。

さて、どうしても都合が悪いときはどうしたらよいでしょうか。

このあたりは、法律(民事訴訟法)もちゃんと考えてくれていて、「原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。」(158条)ということになっています。
ですから、第1回期日に欠席しても、被告であるAさんとしては、「答弁書」を裁判所に提出しておけばよいことになります。これを「擬制陳述」とか「陳述擬制」と言います。

Question:

答弁書?そんな書面を書くのはめんどくさいよ。

Answer:

答弁書は、相手、つまり原告の訴えを認める、という方向でない限り、絶対に第1回期日までに提出しなければなりません。

と言いますのは、法律(民事訴訟法)は、「当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。」(159条1項)となっていて、「第1項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。」(同条3項)となっているからです。
ここでいう「自白」とは、刑事ドラマなどでいう「自供」とは少し意味が違います。自分に不利益なことを話す、ということが本来の意味ですので、その意味は民事訴訟での「自白」でも変わらないのですが、民事訴訟では、「裁判所において当事者が自白した事実(中略)は、証明することを要しない。」(179条)とされています。
日本の刑事裁判(刑事訴訟)では、「事実の認定は、証拠による。」(刑事訴訟法317条)とされていて、証拠によって事実を認定しなければならないのは民事裁判でも同じなのですが、先ほどの179条では、証拠がなくても、自白があれば、そのような事実があったことになってしまう、というのがその意味です。

ですから、第1回期日に出席しない場合に、なんにも提出しないと、原告の主張に対して、Aさん、つまり被告が自白したことになってしまい、原告の主張がそのまま認められてしまいます。裁判所としても、それ以上審理することは何もないので、口頭弁論を終結する、つまり、裁判終了ということになり、原告の主張通りの判決が出されてしまうのです。判決が出されてしまえば、原告は、たとえこちらがお金を払いたくなくて、払わない、払わない、と言っても、強制執行という方法で、お金を取り立てられてしまうのです。

なので、第1回期日に都合が悪くて出席できないとしても、答弁書だけは必ず書きましょう。

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カテゴリー: コラム