<ストーカー規制法> ストーカーとは

Question:

ストーカーって何ですか?

 

Answer:

「ストーカー行為」は、刑法ではなく、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下「ストーカー規制法」と言います。)により処罰の対象とされ、単に「ストーカー行為」をした者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(13条1項。単純ストーカー罪)。

単純ストーカー罪はいわゆる親告罪、つまり、被害者の告訴が必要となります。

 

ストーカー規制法は、以下に述べるとおり、ストーカー行為の上位概念として「つきまとい等」の行為を定めており(2条)、つきまとい等の行為に対して、警察は、警告(4条)、禁止命令(5条)を出すことができますが、禁止命令に違反してストーカー行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(14条。命令違反ストーカー罪)。

こちらは被害者の告訴は不要です。

 

「ストーカー」は、英語の stalk に「~する人」を表す -er を付けた stalker をカタカナにしたものです。stalk とは、Cambridge Learner’s Dictionary によると、

to follow a person or animal closely and secretly, often to try to catch or attack them

を意味します。

 

しかし、ストーカー規制法は、一般に日本語で使われる「ストーカー」という言葉に、善かれ悪しかれ、法的な意味を付与しています。

 

2条2項は、「ストーカー行為」とは、

a. 同一の者に対し

b. つきまとい等を

c. 反復してする

ことをいうとしています。

 

そして、「b. つきまとい等」について、2条1項は、

A. 目的

B. 相手方

C. 行為

の3つの要素からその内容を定め、「A. 目的」については、

a. 特定の者に対する

b-1. 恋愛感情その他の好意の感情

b-2. 又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する

という目的であることが必要であるとし、「B. 相手方」については

a. 当該特定の者

b-1. 又はその配偶者、直系若しくは同居の親族

b-2. その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者

にそれぞれ対するものでなければならないとしています。

 

さらに「C. 行為」については、単なる「つきまとい」以外に以下のような多種多様な行為が該当するものとしています(2条1項各号)。

 

 

つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること(1号)。

 

その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと(2号)。

 

面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること(3号)。

 

著しく粗野又は乱暴な言動をすること(4号)。

 

電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること(5号)。

 

汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと(6号)。

 

その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと(7号)。

 

その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと(8号)。

 

 

しかも、上記1~4号の場合は、処罰される「ストーカー行為」に該当するためには、さらに次の要件を必要とするものとされています(2条2項の括弧書)。

a. 身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害される場合

b. 又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合

 

おまけに、16条では、軽犯罪法4条と同様に「この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」とされています。

 

ストーカー規制法の目的は、「ストーカー行為を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資すること」(1条)とされていますので、この目的に反して、ストーカー行為を処罰するなどしてはいけないということになります。

 

このように、言葉では「ストーカー」とひと言ですみますが、処罰の対象となる行為は、ストーカー規制法で軽犯罪法なみにかなり細かく規定されており、しかも、刑罰は軽犯罪法と比べるとかなり重いものとなっています。

 

さらに、刑罰は過去の行為を対象とし、過去の行為を罰するものですが、ストーカー規制法は、将来のストーカー行為に対しても、警察による警告・公安委員会による禁止命令などの制度も定めています。

 

私は、このようによく読まないと分からないような法律は悪法だと思っています。判例でも「反復して」の要件が不明確ではないかと問題にされた事件があり、最高裁判所は、憲法には違反しないと判断しました(最高裁判所平成15年12月11日第一小法廷判決)。

 

 

 

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カテゴリー: コラム