Question:
私は、若いころ、若気の至りといいますか、仲間とオートバイを乗り回し、共同危険行為をしたということで、警察のお世話になり、その後、家庭裁判所で保護観察となりました。
その後、テレビで裁判の世界を見て、将来、裁判の仕事をしたいと思うようになりました。
しかし、若いころのことがありますので、そのことが気にかかります。
私は、裁判官、検察官、弁護士のどれかになることはできるのでしょうか。
Answer:
六法を見てみると、法律上、次のとおり定められています。
裁判官の場合、裁判所法があります。
裁判所法第46条(任命の欠格事由)
他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者の外、左の各号の一に該当する者は、これを裁判官に任命することができない。
1 禁錮以上の刑に処せられた者
2 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
この「他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者」とは、国家公務員法に定められています。
国家公務員法第38条(欠格条項)
次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則の定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
1 成年被後見人又は被保佐人
2 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
3 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者
4 人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第109条から第112条までに規定する罪を犯し刑に処せられた者
5 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
検察官の場合には、検察庁法があります。
検察庁法第20条
他の法律の定めるところにより一般の官吏に任命されることができない者の外、左の各号の一に該当する者は、これを検察官に任命することができない。
1 禁錮以上の刑に処せられた者
2 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
この場合の「他の法律の定めるところ」とは、前に掲げた国家公務員法第38条のことです。
さらに、弁護士の場合には、弁護士法があります。
弁護士法第7条(弁護士の欠格事由)
次に掲げる者は、第4条、第5条及び前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有しない。
1 禁錮以上の刑に処せられた者
2 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
3 懲戒の処分により、弁護士若しくは外国法事務弁護士であつて除名され、弁理士であつて業務を禁止され、公認会計士であつて登録を抹消され、税理士であつて業務を禁止され、又は公務員であつて免職され、その処分を受けた日から3年を経過しない者
4 成年被後見人又は被保佐人
5 破産者であつて復権を得ない者
以上の条文のとおり、保護観察処分(少年法24条1項1号)を受けたことは、いずれの場合も欠格事由ではありませんので、お尋ねの場合でも、裁判官、検察官、弁護士になることができます。
がんばってください。
Postscript (Dec. 14, 2013):
「前科前歴がある場合に公務員や資格職に就くことができるか」というご質問は、多々尋ねられる質問です。
このような疑問は、「法律に違反して犯罪を犯した者が法律に根拠をおく公務員や資格職に就くことができるのだろうか。」という矛盾が疑問の根源にあると思います。
みなさんはどう思われますか?
確かに「法律を破った者が公務員や資格職に就くのはおかしい。」と言える思います。
しかし、軽微な法律違反の場合、国家によって有罪とされていない場合にまで、人材を得る機会を奪うことは、国家ひいては国民のためにも損失であるという判断から、各種法律で一線が引かれて欠格事由が定められているのだと思います。
公務員法や各資格職の法律を見ると、大体「禁錮以上の罪に処せられた」ということがその一線とされているようです。
公務員にせよ資格職にせよ、その存在の根拠は各法律に規定されています。
公務員あるいは資格職を目指す方々は、自分が就職しようとする職業の根拠規定を当然知っておくべきだと思います。
これらの職業は、国民の利益のためにある職業であり、国民の意思によって根拠規定である法律が定められている以上、その法律を知らないでは何のための公務員、資格職か、と言われてしまうのではないでしょうか。