<不法行為> 犬が吠える!

Question:

隣の家の犬が毎日吠えてうるさい。訴えてやる。

 

Answer:

ペットに関する法律は、まず動物の占有者等の責任を定めた民法718条があります。

 

第718条

第1項 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。

 

第2項 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。

 

この規定は、民法上の不法行為の規定ですので、「他人に損害を与えないように注意する義務を負うのに、その義務に違反して他人に損害を与えたときは」損害賠償責任を負う、というふうに読みます。

 

次に、「動物の愛護及び管理に関する法律」があります。通称は「動物愛護管理法」です。

 

この法律の第3章には「動物の適正な取扱い」が定められ、その第7条には動物の所有者又は占有者の責務等が規定されています。

 

第7条

第1項 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。

 

第2項 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物に起因する感染性の疾病について正しい知識を持ち、その予防のために必要な注意を払うように努めなければならない。

 

第3項 動物の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する動物の逸走を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 

第4項 動物の所有者は、その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。

 

第5項 動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない。

 

第6項 動物の所有者は、その所有する動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置として環境大臣が定めるものを講ずるように努めなければならない。

 

第7項 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができる。

 

この規定は、「努めなければならない」と連発していますが、これはいわゆる努力規定であり、こうしなければならないという注意義務を負わせるほど強力なものではありません。

「努力はしてね。でも、努力しないからといって責任を問うことまではしませんよ。」と読んでよいかと思います。

また、「努力していればいいですよ。」とも読むことができます。

 

それでは実際の裁判ではどのような基準になるのでしょうか。

 

この点にふれた裁判例として、東京地裁平成7年2月1日判決があります。

 

この裁判例では、飼主の注意義務について、

「住宅地において犬を飼育する以上、その飼主としては、犬の鳴き方が異常なものとなつて近隣の者に迷惑を及ぼさないよう、常に飼犬に愛情を持つて接し、規則正しく食事を与え、散歩に連れ出し運動不足にしない、日常生活におけるしつけをし、場合によつては訓練士をつける等の飼育上の注意義務を負う」

としています。

 

そして、この注意義務に違反した上で、どの程度の損害を被ったかについて、「受忍限度を超えたもの」でなければならないとしています。

 

「受忍限度」とは、法律上の言葉ではないのですが、最高裁の判例では

「社会生活上一般的に被害者において忍容するを相当とする程度」のことを言うとされています(最高裁昭和47年6月27日第三小法廷判決)。

つまり、「それはふつうまずいでしょ。」という程度のことです。

本当は、受忍限度を超えたかどうかを判断するには、さまざまな要素を考慮して判断しなければならないということになってはいますが、一言で言うとそのような表現になるわけです。

 

実際に先ほどの平成7年の東京地裁判決ではどのような要素を考慮しているかと言いますと、静かな住宅街であること、夕方から夜、朝方にかけて4匹の犬が相当吠えていること、被害者が最初に話合いを求め、加害者がその話合いに応じなかったことから、役所、保健所、警察などに相談したこと、などの事情を考慮しています。

 

そして、この裁判ではいくらの損害を認定したかと言いますと、加害者の方で防音設備を施したなど、加害者に有利な事情を認定した上で、3名の被害者に対し、各30万円の慰謝料を認めました(請求は各100万円でした)。

 

この慰謝料の金額はどう思われますか?

 

Postscript (Dec. 14, 2013):

結局、裁判所で認められる金額がその程度だとすると、かえって弁護士費用の方が高くついてしまうかもしれません。

また、平成7年東京地裁判決を見ても、慰謝料が認められるためのハードルはやや高いと言えるかもしれません。

現実的には、話合いで解決することになるでしょう(もっとも、話にならないから訴えてやる!という話になるわけですが…)。

先ほどの動物愛護管理法では、地方公共団体に「動物愛護担当職員」を置くことができる、あるいは、「動物愛護推進員」を委嘱することができるとしており、行政に相談するときは、まず、こちらに相談することになるでしょう。

 

 

 

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カテゴリー: コラム